喜びを加へに急ぐ旅なれば
思へどえこそとどめざりけれ
- 歌の意味
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喜びをさらに加えるために急ぐ旅であるから、名残惜しく思うけれども、引きとめることはできなかった。
- 鑑賞
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巻第六 別歌 174
詞書「左京大夫顕輔、加賀守にて下り侍りけるに言ひつかはしける」
加賀守に任じられて任国へ下る藤原顕輔に贈った歌である。国守への任官という慶事に、さらに喜びを重ねるための旅であるから、別れを惜しみながらも引きとめることはできないと、祝意と惜別の情をあわせて述べている。
顕輔は本集の撰者であり、撰者自身の任国下向に際して贈られた歌が別歌に収められている。祝いの心を前に出しつつ、その奥に寂しさをにじませた詠みぶりである。
初句「喜びを」は任官の慶事を指す。別れの歌でありながら喜びの語から始まる点が、本巻の中で異色である。
二句「加へに急ぐ」の「加へに」は、動詞「加ふ」の連用形に格助詞「に」が付いて目的を表す。すでに得た喜びに、さらに喜びを加えるために旅路を急ぐ意である。
三句「旅なれば」は已然形に「ば」が付いた確定条件で、「旅であるから」の意。
四句「思へどえこそ」の「思へど」は、名残惜しく思うけれどもの意。「え」は打消と呼応して不可能を表し、「こそ」は係助詞で、結句の「けれ」と係り結びをなす。
結句「とどめざりけれ」の「ざり」は打消、「けれ」は「こそ」の結びの已然形である。前歌の第百七十三首が去りゆく人を引きとめられない嘆きを詠むのに対し、ここでは慶事ゆえに引きとめないという形で惜別を表している。
くはふ:付け加える、重ねる
とどむ:引きとめる
- 作者
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源俊頼
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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もろともにたたましものを陸奥の 衣の関をよそに聞くかな
- 次の歌
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とまりゐて待つべき身こそ老いにけれ あはれ別れは人のためかは