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とまりゐて待つべき身こそ老いにけれ
あはれ別れは人のためかは

歌の意味
都にとどまって、あなたの帰りを待たなければならない私の身こそ、すっかり年老いてしまった。ああ、別れというものは、旅立つ人のためだけのものだろうか、いや、残される者にこそつらいものだ。
鑑賞
巻第六 別歌 175

詞書「橘則光朝臣、陸奥国の守にて下り侍りけるに、餞し侍るとてよめる」
 陸奥守として下向する橘則光の送別にあたって詠んだ歌である。任期を終えて帰る日を待つべき自分のほうがすでに老いており、再会できるかもわからない。別れの悲しみは旅立つ者だけのものではなく、残される老いた身にこそ深いと訴えている。
 原文では作者が示されていないが、本集の本文では藤原輔尹の作とされる。則光は清少納言と夫婦であったことでも知られる人物である。

 初句「とまりゐて」は、都にとどまり続けての意で、旅立つ則光と残る作者とを対比させる。
 二句「待つべき身こそ」の「べき」は当然、「こそ」は係助詞で、三句の「けれ」と係り結びをなす。本巻の第百七十七首にも「まつべき身こそ」の句があり、旅立つ人の帰りを待つ老いた身を詠む二首が近くに並べられている。
 三句「老いにけれ」の「に」は完了、「けれ」は詠嘆を含む過去の助動詞の已然形で、「こそ」の結びとなる。ここで三句切れとなる。
 四句「あはれ別れは」の「あはれ」は感動詞で、別れというものを改めて取り上げて嘆いている。
 結句「人のためかは」の「かは」は反語で、「別れは旅立つ人のためのものだろうか、いやそうではない」の意。残る者の嘆きの深さを強調して結ぶ。

はなむけ:旅立つ人に贈る品や送別の宴
とまりゐる:その場にとどまり続ける
出典
詞花和歌集
前の歌
喜びを加へに急ぐ旅なれば 思へどえこそとどめざりけれ
次の歌
帰り来む程をも知らず悲しきは よをながつきの別れなりけり