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帰り来む程をも知らず悲しきは
よをながつきの別れなりけり

歌の意味
いつ帰って来るのかもわからず悲しいのは、夜を長く過ごす長月に交わす別れだからである。
鑑賞
巻第六 別歌 176

 長月、つまり陰暦九月に旅立つ人との別れを詠んだ歌である。いつ戻るのかもわからない別れの悲しさを、秋の夜長の季節に重ね合わせ、待つ時間の長さを月の名に託して表している。

 初句「帰り来む」の「む」は推量で、旅立つ人が帰って来るであろう時をいう。
 二句「程をも知らず」の「程」は時期の意。「も」が添えられ、帰る時期さえわからない不安を強めている。
 三句「悲しきは」は、何が悲しいのかを結句で明かす構成で、ここで問いを立てる形となっている。
 四句「よをながつきの」は、「よをなが」に、夜を長く過ごす意と「長月」とを掛ける掛詞である。前歌の第百七十五首が待つ身の老いを嘆いたのを受け、ここでは待つ時の長さが季節の名に重ねられている。
 結句「別れなりけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、悲しみの理由を改めて確かめて結ぶ。

ながつき:陰暦九月の異称。「よをなが」として夜を長く過ごす意を掛ける
ほど:時期、ころ
出典
詞花和歌集
前の歌
とまりゐて待つべき身こそ老いにけれ あはれ別れは人のためかは
次の歌
六年にぞ君は来まさむ住吉の まつべき身こそいたく老いぬれ