二つなき心を君にとどめおきて
我さへ我に別れぬるかな
- 歌の意味
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ただ一つしかない心をあなたのもとに残してきたので、あなたとの別れだけでなく、私までもが私自身と別れてしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第六 別歌 182
別れに際して、ただ一つの心を相手のもとに置いてきたため、自分は心を失った抜け殻となり、自分自身とも別れてしまったと詠む歌である。相手との別れを自分自身との別れに転じる機知に富んだ表現で、惜別の思いの深さを言い表している。
初句「二つなき」は、ただ一つしかないの意。
二句「心を君に」は、その唯一の心をあなたにの意で、心を相手に託す発想を示している。
三句「とどめおきて」は、残し置いての意。本巻の第百七十四首の「とどめざりけれ」が旅立つ人を引きとめられないことを言うのに対し、ここでは自らの心を相手のもとにとどめている。
四句「我さへ我に」の「さへ」は添加の副助詞で、あなたとの別れに加えて自分までもの意。同じ語を重ねる表現である。
結句「別れぬるかな」の「ぬる」は完了「ぬ」の連体形、「かな」は詠嘆で、心を失った自分をも別れの当事者として描き、驚きを込めて結ぶ。
とどめおく:あとに残して置く
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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とどまらむとどまらじとも思ほえず いづくも終の住処ならねば
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暮ればまづそなたをのみぞ眺むべき 出でむ日ごとに思ひおこせよ