あやしくもわがみやまきの燃ゆるかな
おもひは人に付けてしものを
- 歌の意味
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不思議なことに、わが身という深山の木が燃えていることだ。恋の思いの火は、あの人の心につけたはずなのに。
- 鑑賞
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巻第七 恋歌上 187
恋の思いを火にたとえ、相手の心に火をつけたつもりが、燃えているのは自分の身のほうだという不思議さを詠んだ一首である。わが身を山深い木に見立て、思いの火に焦がれる恋の苦しさを、驚きの口調で機知的に表している。
詞花和歌集の恋歌上の巻頭に置かれた歌で、作者は崇徳天皇の代に関白を務めた藤原忠通である。燃える火の歌で幕を開けた本巻は、涙を滝にたとえる歌で閉じられる。
初句「あやしくも」は、思いがけない事態に対する驚きを表し、一首の主題となる不思議さを冒頭に掲げている。
二句「わがみやまきの」は、「わが身」と「深山木」を重ねた掛詞で、自分の身を山深い木に見立てている。
三句「燃ゆるかな」は、詠嘆の終助詞「かな」で切れる三句切れである。燃える火で始まる巻頭は、巻末の第二百三十二首が涙を音無の滝にたとえて結ぶのと、火と水の対照をなして呼応する。
四句「おもひは人に」は、「思ひ」の「ひ」に「火」を掛け、恋の火は相手に向けたものだったという意を示す。
結句「付けてしものを」は、過去の助動詞「き」の連体形「し」と逆接の「ものを」で、火をつけたのは相手のほうだったのにと嘆いて結ぶ。
みやまき:山深くに生える木。ここでは「わが身」と重ねる掛詞とする
おもひ:恋の思いと、燃える火を掛ける
- 作者
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藤原忠通
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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はかなくも今朝の別れの惜しきかな いつかは人をながらへて見し
- 次の歌
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いかでかはおもひありとも知らすべき 室の八島の煙ならでは