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谷川の岩間を分けて行く水の
音にのみやは聞かむと思ひし

歌の意味
谷川の岩の間を分けて流れていく水の音のように、あなたのことを噂にだけ聞いていようと思っていただろうか。いや、そうではなかった。
鑑賞
巻第七 恋歌上 191

 谷川の水音を序に用いて、噂に聞くだけの相手への思いを詠んだ一首である。人づてに聞くだけで満足するつもりはなかったと、逢いたい気持ちが募っていく心を表している。

 初句「谷川の」から三句までは、「音」を導く序詞である。
 二句「岩間を分けて」は、岩の間を押し分けるように流れる水の勢いを描き、内にこもる思いの激しさを感じさせる。
 三句「行く水の」は、比喩の「の」で四句の「音」に続く。
 四句「音にのみやは」は、水の「音」と噂の意の「音」とを重ね、係助詞「やは」で反語を導く。
 結句「聞かむと思ひし」は、「やは」を受けて過去の助動詞「き」の連体形「し」で結ぶ係り結びで、噂に聞くだけでいようとは思わなかったと結ぶ。

いはま:岩と岩の間
おと:水の音と、うわさの意を重ねる
作者
平兼盛
出典
詞花和歌集
前の歌
思ひかね今日立てそむる錦木の 千束も待たで逢ふよしもがな
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世とともに恋ひつつ過ぐる年月は 変はれど変はる心地こそせね