恋ひ死なば君はあはれと言はずとも
なかなかよその人やしのばむ
- 歌の意味
-
恋い死にしたならば、あなたはかわいそうにとも言わないだろうが、かえって無関係な他人のほうが偲んでくれるだろうか。
- 鑑賞
-
巻第七 恋歌上 197
自分が恋い死にしても当の相手は憐れみの言葉さえかけてくれないだろうが、むしろ見知らぬ他人のほうが悲しんでくれるかもしれないと詠む一首である。相手のつれなさを、他人の情けと対比して際立たせている。
初句「恋ひ死なば」は、仮定条件で恋い死にを想定する。本巻の第百八十九首と同じ句で、知られぬまま死ぬ不安に対し、ここでは死後に偲ぶ人を思い描いている。
二句「君はあはれと」は、前歌の第百九十六首の「あはれと言はむ」を受け、言葉をかける側を相手に定めている。
三句「言はずとも」は、逆接仮定の「とも」で、言わないとしてもという意を表す。
四句「なかなかよその」は、副詞「なかなか」で、かえって無関係な他人のほうがという意外さを示す。前歌の「よそながら」の「よそ」を受けている。
結句「人やしのばむ」は、係助詞「や」と推量の「む」の連体形による係り結びで、偲んでくれるだろうかと結ぶ。
よそのひと:自分とかかわりのない人
しのぶ:亡き人を思い慕う
- 出典
-
詞花和歌集
- 前の歌
-
よそながらあはれと言はむことよりも 人づてならで厭へとぞ思ふ
- 次の歌
-
いかばかり人のつらさを恨みまし 憂き身のとがと思ひなさずは