古典和歌stream

わびぬればしひて忘れむと思へども
心弱くも落つる涙か

歌の意味
恋に思い悩んだので、無理にでも忘れようと思うのだが、心弱くもこぼれ落ちる涙であることよ。
鑑賞
巻第七 恋歌上 203

 恋のつらさに耐えかねて無理にでも忘れようと決心しても、意志に反して涙はこぼれてしまうと詠む一首である。忘れようとする理性と、抑えきれない心との葛藤が表れている。

 初句「わびぬれば」は、完了の「ぬ」の已然形に「ば」が付いた確定条件で、思い悩んだのでという理由を示す。
 二句「しひて忘れむと」は、八音の字余りで、無理にでも忘れようという強い決意を表す。
 三句「思へども」は、逆接の「ども」で、決意とは裏腹な結果へと転じる。
 四句「心弱くも」は、意志に反してもろく崩れる心をいう。
 結句「落つる涙か」は、詠嘆の終助詞「か」で、こぼれる涙への嘆きを込めて体言で結ぶ。

わぶ:思い悩む。つらく思う
作者
よみ人しらず
出典
詞花和歌集
前の歌
年を経て燃ゆてふ富士の山よりも 逢はぬおもひはわれぞまされる
次の歌
思はじと思へばいとど恋しきは いづちか我が心なるらむ