古典和歌stream

ひとかたに思ひ絶えにし世の中を
いかがはすべきしづのをだまき

歌の意味
すっかり思いを断ち切ってしまったあなたとの仲を、今さらどうしたらよいのだろう。倭文の苧環の糸を繰り返すように、もとに戻すことはできるのだろうか。
鑑賞
巻第七 恋歌上 206

 一度はきっぱりと思い切ったはずの相手との仲を、今になってどうしたらよいのかと思い迷う一首である。糸を巻いた苧環を結句に置き、糸が「絶え」るさま、繰り返し巻き取るさまに、途切れた仲を取り戻せない嘆きを重ねている。
 苧環を繰り返して昔を今に戻したいと願う、伊勢物語にも見える古歌の発想を踏まえたものとされる。

 初句「ひとかたに」は、ひたすらにという意で、きっぱりと思い切ったことを示す。
 二句「思ひ絶えにし」は、完了の「ぬ」と過去の「き」で、すっかり思いを断ってしまったことを表す。「絶え」は結句の「をだまき」の糸と縁語をなす。
 三句「世の中を」は、男女の仲をいう。
 四句「いかがはすべき」は、係助詞「は」を伴う疑問で、どうしたらよいのだろうかと思い迷う意を表す四句切れである。
 結句「しづのをだまき」は、倭文を織る糸を巻いた苧環で、体言止めとして置かれ、糸を繰り返す意から昔に戻したいという思いを響かせる。

しづ:日本古来の織物である倭文
をだまき:紡いだ麻糸を巻いて玉にしたもの
作者
藤原公任
出典
詞花和歌集
前の歌
心さへむすぶの神や作りけむ 解くるけしきも見えぬ君かな
次の歌
影見えぬ君は雨夜の月なれや 出でても人に知られざりけり