影見えぬ君は雨夜の月なれや
出でても人に知られざりけり
- 歌の意味
-
姿の見えないあなたは雨の夜の月なのだろうか。出てきても、人に知られることがなかったことだ。
- 鑑賞
-
巻第七 恋歌上 207
姿を見せない恋人を雨夜の月にたとえた一首である。雨雲に隠れた月は空に出ていても人に気づかれないように、相手は来ても姿を見せず、その訪れを知ることができないと嘆いている。
初句「影見えぬ」は、姿が見えないという意で、「影」は月の光と人の姿の両方を思わせる。
二句「君は雨夜の」は、係助詞「は」で相手を取り立て、雨の夜の月にたとえる。
三句「月なれや」は、已然形に「や」が付いた疑問で、月だからだろうかという意を表す三句切れである。
四句「出でても人に」は、月が出る意と人が出かける意とを重ね、出てきてもという逆接を示す。
結句「知られざりけり」は、詠嘆の「けり」で、知られずに終わったと嘆いて結ぶ。本巻の第百八十八首、第百八十九首の知る知られぬの主題を、月の比喩で詠み変えている。
かげ:月の光。また人の姿
あまよ:雨の降る夜
- 出典
-
詞花和歌集
- 前の歌
-
ひとかたに思ひ絶えにし世の中を いかがはすべきしづのをだまき
- 次の歌
-
七夕に今朝引く糸の露をおもみ たわむけしきを見でや止みなむ