風をいたみ岩打つ波のおのれのみ
くだけてものを思ふころかな
- 歌の意味
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風が激しいので、岩に打ちつける波が自分だけ砕け散るように、わたしだけが心も砕けるほどに思い悩むこのごろであることよ。
- 鑑賞
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巻第七 恋歌上 211
詞書「冷泉院春宮と申しける時、百首歌奉りけるによめる」
びくともしない岩に打ちつけては砕け散る波の姿に、つれない相手に思いを寄せて心を砕く自分をなぞらえた一首である。岩と波の鮮烈な対比が、片思いの苦しさを印象深く描き出している。
詞書によれば、冷泉天皇がまだ東宮であったころに献上した百首歌の中の一首で、この重之百首は現存する百首歌のうちでも早い時期のものとされる。小倉百人一首の第四十八番に採られ、藤原定家の『定家八代抄』『八代集秀逸』にも選ばれている。
初句「風をいたみ」は、「を」と形容詞「いたし」の語幹に「み」が付いた形で、風が激しいのでという理由を表す。初句から二句までは「おのれのみくだけて」を導く序詞である。
二句「岩打つ波の」は、動かない岩に打ちつける波で、岩を相手の心、波を自分にたとえる。次歌の第二百十二首も山の奥へ「思ひ入る」と自然の景に恋をたとえ、景物による比喩が続いている。
三句「おのれのみ」は、副助詞「のみ」で、相手は動じず自分だけがという意を表す。
四句「くだけてものを」は、波が砕ける意と、心が千々に乱れて思い悩む意とを重ねている。
結句「思ふころかな」は、詠嘆の「かな」で結ぶ。本巻の第二百三十首も同じ結句「思ふころかな」で結ばれ、ともに自然の景を序として恋の思いへ転じている。
くだく:波が砕け散る意と、心が乱れて思い悩む意を重ねる
- 作者
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源重之
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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わびつつも同じ都は慰めき 旅寝ぞ恋の限りなりける
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わが恋は吉野の山の奥なれや おもひいれども逢ふ人もなし