恋すれば憂き身さへこそ惜しまるれ
同じ世にだに住まむと思へば
- 歌の意味
-
恋をしていると、このつらい身さえも惜しく思われる。せめてあの人と同じ世の中に住んでいたいと思うので。
- 鑑賞
-
巻第七 恋歌上 224
恋をすると、つらいばかりのわが身さえ惜しくなる、せめて恋しい人と同じ世に生きていたいからだと詠む一首である。逢えなくても同じ世にいたいという、つつましくも切実な願いが表れている。
初句「恋すれば」は、已然形に「ば」が付いた確定条件で、恋をしているのでという意を表す。
二句「憂き身さへこそ」は、副助詞「さへ」と係助詞「こそ」で、つらい身さえもと強調する。
三句「惜しまるれ」は、自発の助動詞「る」の已然形で「こそ」を受けて結ぶ係り結びの三句切れである。本巻の第二百二十一首の「身こそ思へば惜しからね」と対をなし、身を惜しまない心と惜しむ心とが並べられている。
四句「同じ世にだに」は、副助詞「だに」で、せめて同じ世にだけでもという最小限の願いを表す。本巻の第二百十首の「同じ都」とも響き合う。
結句「住まむと思へば」は、意志の「む」と確定条件の「ば」で、理由を倒置して結ぶ。
うきみ:つらく不幸な身の上
- 出典
-
詞花和歌集
- 前の歌
-
うれしきはいかばかりかは思ふらむ 憂きは身にしむものにぞありける
- 次の歌
-
御垣守衛士のたく火の夜は燃え 昼は消えつつものをこそ思へ