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風吹けば藻塩の煙かたよりに
なびくを人の心ともがな

歌の意味
風が吹くと藻塩を焼く煙が一方に片寄ってなびく。そのようにわたしのほうへなびくのが、あの人の心であったらよいのに。
鑑賞
巻第七 恋歌上 228

 風に吹かれて一方に片寄ってなびく藻塩の煙のように、相手の心がひたすら自分のほうへなびいてくれたらと願う一首である。海辺の製塩の景を、恋の願いに重ねている。

 初句「風吹けば」は、已然形に「ば」が付いた確定条件で、風が吹くとという意を表す。
 二句「藻塩の煙」は、海藻に海水を注いで焼き、塩を作るときに立つ煙をいう。本巻の第百八十八首、第二百十三首などの煙の歌に連なり、ここでは煙が思いどおりになびく姿を願いの比喩としている。
 三句「かたよりに」は、一方に片寄ってという意である。
 四句「なびくを人の」は、煙がなびく意と、人の心が寄り従う意とを重ねている。
 結句「心ともがな」は、願望の終助詞「もがな」で、そうであればよいのにと結ぶ。

もしほ:海藻に海水を注いで焼き、塩をとること
なびく:風に従って傾く。また心を寄せる
作者
藤原親隆
出典
詞花和歌集
前の歌
氷して音はせねども山川の 下に流るるものと知らずや
次の歌
瀬をはやみ岩にせかるる滝川の われても末に逢はむとぞ思ふ