古典和歌stream

瀬をはやみ岩にせかるる滝川の
われても末に逢はむとぞ思ふ

歌の意味
川の瀬の流れが速いので、岩にせき止められる急流が二つに分かれても、末にはまた一つに合うように、今は別れても、いつかは必ず逢おうと思う。
鑑賞
巻第七 恋歌上 229

詞書「題しらず」
 岩にせき止められて二つに分かれた急流が、下流でふたたび一つになるように、今はやむなく別れても将来は必ず逢おうという強い思いを詠んだ一首である。激しい水の流れに託された、恋の情熱と再会への決意が力強く響く。
 作者は詞花和歌集の撰集を命じた崇徳院で、原文では新院御製とある。崇徳院が主催した久安百首に詠まれた歌で、そこでは初句と三句が異なる形で伝わるとされる。小倉百人一首の第七十七番に採られ、藤原定家の『定家八代抄』『八代集秀逸』にも選ばれている。

 初句「瀬をはやみ」は、「を」と形容詞の語幹に「み」が付いた形で、瀬の流れが速いのでという理由を表す。初句から三句までは「われても」を導く序詞である。
 二句「岩にせかるる」は、受身の助動詞「る」の連体形で、岩にせき止められるという意を表す。本巻の第二百十一首の岩に打ちつける波と同じく、岩が恋の障害として描かれている。
 三句「滝川の」は、滝のように激しく流れる急流をいう。
 四句「われても末に」は、流れが二つに割れる意と、恋人と別れる意とを重ね、末に再び合流するように、いつか逢おうという意を導く。
 結句「逢はむとぞ思ふ」は、意志の「む」と係助詞「ぞ」、連体形「思ふ」による係り結びで、必ず逢おうと強い決意を込めて結ぶ。

せ:川の浅く流れの速い所
せく:流れをせき止める
たきがは:滝のように激しく流れる川
わる:流れが二つに分かれる意と、恋人と別れる意を重ねる
作者
崇徳院
出典
詞花和歌集
前の歌
風吹けば藻塩の煙かたよりに なびくを人の心ともがな
次の歌
播磨なる飾磨に染むるあながちに 人を恋しと思ふころかな