心をばとどめてこそは帰りつれ
あやしや何の暮れを待つらむ
- 歌の意味
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心はあの人のもとに残してきてこそ帰ってきたのだ。不思議なことだ、それなのにいったい何が、夕暮れを待っているのだろうか。
- 鑑賞
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巻第八 恋歌下 236
恋人のもとを去るとき、心はそこに置いてきたはずなのに、それでも夕暮れの再会を待ちわびているのは何なのかと、自らをいぶかしむ一首である。心を置いてきたという理屈を逆手に取り、抑えきれない恋しさを機知的に表している。
初句「心をば」は、係助詞「ば」で心を強く取り立てる。
二句「とどめてこそは」は、係助詞「こそ」で、心をとどめてきたことを強調する。本巻の第二百四十一首も「心をとどめつるかな」と同じ語を用いている。
三句「帰りつれ」は、完了の「つ」の已然形で「こそ」を受けて結ぶ係り結びの三句切れである。
四句「あやしや何の」は、間投助詞「や」で不思議さを詠嘆し、心がないのに何がという問いを導く。
結句「暮れを待つらむ」は、現在推量の「らむ」で、夕暮れを待っているのは何なのだろうかと問いかけて結ぶ。夕暮れは恋人のもとを訪れる時刻であり、本巻の第二百三十八首の、日の暮れの遅さを嘆く歌へとつながっていく。
とどむ:あとに残す。とどめ置く
- 作者
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藤原俊成
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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夜を深み帰りし空もなかりしを いづくより置く露に濡れけむ
- 次の歌
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竹の葉に玉貫く露にあらねども まだよをこめておきにけるかな