皆人の惜しむ日なれど我はただ
遅く暮れゆく嘆きをぞする
- 歌の意味
-
世の人々が皆、暮れるのを惜しむ日であるけれども、わたしはただ、日がなかなか暮れていかないことを嘆いている。
- 鑑賞
-
巻第八 恋歌下 238
人々が暮れゆくのを惜しむ日であっても、夜の逢瀬を待つ自分には、日の暮れの遅さこそが嘆きの種だと詠む一首である。世の人々と自分との思いの違いを対比させ、恋人に逢う夜を待ちわびる心を表している。
巻第七の第二百三十一首も、短いはずの冬の日の暮れを待ち遠しく思う歌で、同じ待つ心を詠んでいる。
初句「皆人の」は、世の人々皆がという意で、自分と対比される人々を示す。
二句「惜しむ日なれど」は、逆接の「ど」で、皆が暮れを惜しむ日であるけれどもという意を表す。
三句「我はただ」は、係助詞「は」で自分を取り立て、初句の「皆人」と対比させる。
四句「遅く暮れゆく」は、日がなかなか暮れていかないことをいう。本巻の第二百三十六首の「暮れを待つ」を受け、暮れを待つ心を日の長さの嘆きとして詠んでいる。
結句「嘆きをぞする」は、係助詞「ぞ」と連体形「する」による係り結びで、嘆いていると強く言い切って結ぶ。
みなひと:世の中の人すべて
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
詞花和歌集
- 前の歌
-
竹の葉に玉貫く露にあらねども まだよをこめておきにけるかな
- 次の歌
-
住吉の浅沢小野の忘れ水 絶え絶えならで逢ふよしもがな