思ふことなくて過ぎつる世の中に
つひに心をとどめつるかな
- 歌の意味
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何の物思いもなく過ごしてきたこの世の中で、とうとう心を一人の人にとどめてしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第八 恋歌下 241
これまで物思いもなく過ごしてきた自分が、ついに一人の人に心を奪われ、この世に執着を持つようになったと詠む一首である。恋を知ったことで心のありようが一変したことへの、驚きと感慨が表れている。
初句「思ふこと」は、物思い、悩み事をいう。
二句「なくて過ぎつる」は、完了の「つ」の連体形で、物思いもなく過ごしてきたことを表す。
三句「世の中に」は、この世の中の意に、男女の仲の意も響かせる。
四句「つひに心を」は、とうとうという意で、長く無縁であった恋に心を奪われたことを示す。
結句「とどめつるかな」は、完了の「つ」と詠嘆の「かな」で結ぶ。本巻の第二百三十六首の「心をばとどめて」と同じ語を用い、恋人のもとに心をとどめる歌と、世に心をとどめる歌とが響き合っている。
とどむ:とどめ置く。執着する
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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我のみや思ひおこせむあぢきなく 人は行方も知らぬものゆゑ
- 次の歌
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常よりも露けかりける今宵かな これやあきたつはじめなるらむ