古典和歌stream

常よりも露けかりける今宵かな
これやあきたつはじめなるらむ

歌の意味
いつもよりも露にしめっぽく、涙がちな今宵であることだ。これが秋の立つはじめ、あの人がわたしに飽きはじめるはじめなのだろうか。
鑑賞
巻第八 恋歌下 242

 いつもより露が多くしめっぽい今宵を、秋の始まりの兆しと見ながら、相手の心に「飽き」が立ちはじめたのではないかと不安を抱く一首である。季節の秋と恋の飽きを重ね、袖を濡らす涙を露になぞらえている。

 初句「常よりも」は、いつもよりもという意で、今宵の特別さを示す。
 二句「露けかりける」は、露にしめっている意で、涙に濡れる袖を暗示する。
 三句「今宵かな」は、詠嘆の「かな」で切れる三句切れである。
 四句「これやあきたつ」は、係助詞「や」で疑問を示し、季節の「秋」が立つ意と、相手が「飽き」はじめる意とを掛けている。巻第七の第二百十七首も「秋」と「飽き」を掛けて人の心変わりを詠んでいる。
 結句「はじめなるらむ」は、推量の「らむ」の連体形で「や」を受けて結ぶ係り結びで、そのはじめなのだろうかと不安げに問いかける。

あきたつ:季節の秋が来る意の「秋立つ」と、相手が飽きはじめる意の「飽き立つ」を掛ける
作者
祐子内親王家紀伊
出典
詞花和歌集
前の歌
思ふことなくて過ぎつる世の中に つひに心をとどめつるかな
次の歌
堰きとむる岩間の水もおのづから 下には通ふものとこそ聞け