来たりとも寝る間もあらじ夏の夜の
有明の月も傾きにけり
- 歌の意味
-
今からあの人が来たとしても、共に寝る間もないだろう。短い夏の夜の有明の月も、もう傾いてしまった。
- 鑑賞
-
巻第八 恋歌下 247
恋人の訪れを待つうちに、短い夏の夜は明け方になり、有明の月も傾いてしまったと詠む一首である。待ちわびる時間の長さと、夏の夜の短さとが重なり、来ても共に過ごす時間がないという焦りとあきらめが表れている。
初句「来たりとも」は、逆接仮定の「とも」で、たとえ今来たとしてもという意を表す。
二句「寝る間もあらじ」は、打ち消し推量の「じ」で、共に寝る間もないだろうという二句切れである。
三句「夏の夜の」は、夜の短い夏の夜をいう。
四句「有明の月も」は、夜明けになお空に残る月をいい、係助詞「も」で月までもという意を添える。
結句「傾きにけり」は、完了の「ぬ」と詠嘆の「けり」で、月が傾いてしまったと気づいて結ぶ。
ぬ:寝る
ありあけ:月が空に残ったまま夜が明けること。また明け方
- 作者
-
曾禰好忠
- 出典
-
詞花和歌集
- 前の歌
-
もろともにおきゐる露のなかりせば 誰とか秋の夜を明かさまし
- 次の歌
-
来ぬ人を恨みも果てじ契りおきし その言の葉も情けならずや