来ぬ人を恨みも果てじ契りおきし
その言の葉も情けならずや
- 歌の意味
-
来ない人を恨みきることはすまい。約束しておいてくれたその言葉も、あの人の情けではないだろうか。
- 鑑賞
-
巻第八 恋歌下 248
約束しながら訪れない相手を、恨みきることはするまいと詠む一首である。たとえ果たされなくても、約束の言葉をくれたこと自体が相手の情けだと思い直そうとする、抑えた心が表れている。
初句「来ぬ人を」は、打ち消しの「ず」の連体形で、訪れない人をいう。
二句「恨みも果てじ」は、打ち消し意志の「じ」で、恨みきることはすまいと決める二句切れである。
三句「契りおきし」は、六音の字余りで、過去の「き」の連体形により、かつて約束しておいたことを示す。
四句「その言の葉も」は、約束の言葉をいい、係助詞「も」でそれもまたという意を添える。
結句「情けならずや」は、情けではないだろうか、いや情けであると問いかける形で結ぶ。巻第七の第二百九首も、つれない人の「情け」を問いかけている。
ちぎりおく:前もって約束しておく
ことのは:言葉
なさけ:思いやり、情愛
- 作者
-
藤原忠通
- 出典
-
詞花和歌集
- 前の歌
-
来たりとも寝る間もあらじ夏の夜の 有明の月も傾きにけり
- 次の歌
-
夕暮れにもの思ふことはまさるやと 我ならざらむ人に問はばや