古典和歌stream

夕暮れにもの思ふことはまさるやと
我ならざらむ人に問はばや

歌の意味
夕暮れになると物思いがまさるものなのかと、わたし以外の人に尋ねてみたいものだ。
鑑賞
巻第八 恋歌下 249

 夕暮れになると恋の物思いがいっそうつのるのは自分だけなのか、ほかの人もそうなのかと、誰かに尋ねてみたいと詠む一首である。恋人を待つ時刻である夕暮れの切なさを、他人に問う形でさりげなく表している。

 初句「夕暮れに」は、恋人の訪れを待つ時刻である夕暮れをいう。本巻の第二百七十首も「夕暮れは」で始まり、物思いのまさる夕暮れと、待つこともなくなった夕暮れとが詠み分けられている。
 二句「もの思ふことは」は、恋の物思いをいう。
 三句「まさるやと」は、係助詞「や」で疑問を示し、まさるものかという問いの内容を表す。
 四句「我ならざらむ」は、断定の「なり」と打ち消しの「ず」、婉曲の「む」で、わたしではない人をいう。
 結句「人に問はばや」は、自己の願望の終助詞「ばや」で、尋ねてみたいと結ぶ。

ものおもふ:恋などに思い悩む
作者
和泉式部
出典
詞花和歌集
前の歌
来ぬ人を恨みも果てじ契りおきし その言の葉も情けならずや
次の歌
涙さへ出でにし方を眺めつつ 心にもあらぬ月を見しかな