逢ふことや涙の玉の緒なるらむ
しばし絶ゆれば落ちて乱るる
- 歌の意味
-
逢うことは、涙の玉をつなぎとめる緒なのだろうか。しばらく途絶えると、涙の玉がこぼれ落ちて乱れ散る。
- 鑑賞
-
巻第八 恋歌下 252
逢瀬を涙の玉をつなぎとめる緒にたとえ、逢えない日が続くと緒が切れたように涙がこぼれ乱れると詠む一首である。「玉の緒」「絶ゆ」「乱る」と縁語を連ね、逢えない嘆きを機知的に表している。
初句「逢ふことや」は、係助詞「や」で疑問を示す。
二句「涙の玉の」は、涙を玉にたとえる。
三句「緒なるらむ」は、玉を貫く緒をいい、推量の「らむ」の連体形で「や」を受けて結ぶ係り結びの三句切れである。
四句「しばし絶ゆれば」は、緒が絶える意と逢瀬が途絶える意とを重ね、「玉の緒」と縁語をなす。
結句「落ちて乱るる」は、玉が落ちて散り乱れる意と涙が乱れこぼれる意とを重ね、「乱る」も「緒」の縁語である。連体形で言いさして余情を残している。
たまのを:玉を貫き通してつなぐ緒
- 出典
-
詞花和歌集
- 前の歌
-
つらしとて我さへ人を忘れなば さりとて仲の絶えやはつべき
- 次の歌
-
御狩野のしばしの恋はさもあらばあれ 反りはてぬるか矢形尾の鷹