忘らるる身はことわりと知りながら
思ひあへぬは涙なりけり
- 歌の意味
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忘れられるこの身は当然のことと分かっていながら、そう思いきれずにこぼれるのは涙であったことだ。
- 鑑賞
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巻第八 恋歌下 265
自分が忘れられるのは道理だと頭では分かっていながら、涙だけはそう割り切ることができずにこぼれてしまうと詠む一首である。理性と感情の食い違いを、涙を主語にして鮮やかにとらえている。
作者の清少納言は、一条天皇の中宮定子に仕え、『枕草子』を著したことで知られる。
初句「忘らるる」は、受身の「る」の連体形で、忘れられるという意を表す。巻末の第二百七十一首も同じ初句で始まり、忘れられる身の嘆きが繰り返されている。
二句「身はことわりと」は、自分が忘れられるのは道理だとする意を表す。
三句「知りながら」は、逆接の「ながら」で、分かっていながらという意を表す。
四句「思ひあへぬは」は、そう思いきることができないという意で、係助詞「は」で取り立てる。
結句「涙なりけり」は、断定の「なり」と詠嘆の「けり」で、思いきれないのは涙であったと気づいて結ぶ。
ことわり:道理、当然のこと
おもひあふ:十分に思いきる。思いを抑えきる
- 作者
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清少納言
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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浅茅生に今朝置く露の寒けくに かれにし人のなぞや恋しき
- 次の歌
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今よりは訪へとも言はじ我ぞただ 人を忘るることを知るべき