春霞かすめる方や津の国の
ほのみしま江のわたりなるらむ
- 歌の意味
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春霞がかすんで見える方角は、津の国の、ほのかに見える三島江のあたりなのだろうか。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌上 272
春霞がたなびいてかすむ方角を遠く望み、あれが摂津国の三島江のあたりであろうかと思いやる一首である。地名の「三島江」に、ほのかに見る意の「ほの見」を重ね、霞の向こうにかすかに見える水辺の景を、柔らかな調べでとらえている。
雑歌上の巻頭に置かれた歌で、摂津国の三島江の霞で始まる本巻は、同じ摂津国の難波江の葦間に宿る月を詠む巻末の第三百四十七首で閉じられる。また次歌の第二百七十三首、その次の第二百七十四首も霞を詠み、霞の歌が三首続いている。
初句「春霞」は、春にたなびく霞をいい、二句の「かすめる」と同じ語を重ねて調子を整えている。
二句「かすめる方や」は、存続の「り」の連体形で霞んでいる方角をいい、係助詞「や」で疑問を示す。
三句「津の国の」は、摂津国をいう。
四句「ほのみしま江の」は、ほのかに見る意の「ほの見」と、摂津国の歌枕「三島江」とを掛けている。
結句「わたりなるらむ」は、断定の「なり」と現在推量の「らむ」の連体形で「や」を受けて結ぶ係り結びで、そのあたりなのだろうかと思いやって結ぶ。
ほのみしまえ:ほのかに見る意の「ほの見」と、摂津国の歌枕「三島江」を掛ける
わたり:あたり、付近
- 出典
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詞花和歌集
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忘らるる人目ばかりを嘆きにて 恋しきことのなからましかば
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須磨の浦に焼く塩釜の煙こそ 春に知られぬ霞なりけれ