古典和歌stream

雲居より貫きかくる白玉を
誰布引の滝と言ひけむ

歌の意味
雲の上から糸に貫いて掛けたような白玉を、いったい誰が布引の滝と名づけたのだろうか。
鑑賞
巻第九 雑歌上 285

 高いところから落ちる滝のしぶきを、雲の上から糸に貫いて掛けた白玉に見立て、これを布引の滝と呼んだのは誰なのかと問いかける一首である。「布を引く」という名に対し、むしろ玉を貫いた糸だと言いなすところに趣向がある。
 布引の滝は摂津国の歌枕で、古くから多くの歌に詠まれた。

 初句「雲居より」は、雲のあるはるか高いところからという意で、滝の高さを示す。
 二句「貫きかくる」は、玉を糸に貫いて掛けるという意で、滝の流れを玉を貫いた糸に見立てている。
 三句「白玉を」は、白く輝く玉で、滝のしぶきを見立てている。
 四句「誰布引の」は、疑問の代名詞「誰」で問いかけ、摂津国の布引の滝の名を示す。「布」は二句の「貫く」と縁語をなす。
 結句「滝と言ひけむ」は、過去推量の「けむ」で、誰が滝をそう名づけたのだろうかと問いかけて結ぶ。

くもゐ:雲のあるところ。はるか高いところ
しらたま:白く美しい玉。真珠
ぬのびきのたき:摂津国の滝。歌枕
作者
藤原隆季
出典
詞花和歌集
前の歌
和歌の浦と言ふにて知りぬ風吹かば 波の立ちこと思ふなるべし
次の歌
難波江の繁き葦間を漕ぐ舟は 棹の音にぞ行く方を知る