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行く人も天の門渡る心地して
雲の波路に月を見るかな

歌の意味
旅行く人も、天の門を渡っていくような心地がして、雲の波路の中に月を見ることだ。
鑑賞
巻第九 雑歌上 297

 旅行く人が、雲を波に見立てた空の道に月を見て、天の門を渡っていくような心地がすると詠む一首である。地上の旅を天上の旅に重ねた、雄大な趣向である。
 本巻の第二百九十三首の、月に誘われて雲の上まで行く心と同じく、月とともに天へ向かう思いを詠んでいる。

 初句「行く人も」は、旅行く人もという意で、係助詞「も」で添える。
 二句「天の門渡る」は、天上の門を渡ることをいい、空を行く月の道を思わせる。
 三句「心地して」は、そのような心地がしてという意を表す。
 四句「雲の波路に」は、雲を波に見立て、その中を行く道をいう。
 結句「月を見るかな」は、詠嘆の「かな」で、月を見ることだと結ぶ。

あまのと:天上の門。天の通り道
なみぢ:船の行く海路。波の上の道
出典
詞花和歌集
前の歌
さびしさに家出しぬべき山里を 今宵の月に思ひとまりぬ
次の歌
君待つと山の端出でて山の端に 入るまで月を眺めつるかな