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長らへば思ひ出にせむ思ひ出でよ
君とみかさの山の端の月

歌の意味
生き長らえたなら思い出にしよう。あなたも思い出しておくれ。あなたと一緒に見た、三笠の山の端の月を。
鑑賞
巻第九 雑歌上 306

 生き長らえたらこの夜の月を思い出にしようと言い、相手にも、ともに見た三笠山の月を思い出してほしいと呼びかける一首である。「見」と「三笠」を掛け、二人で見た月を別れたのちのよすがにしようとする、しみじみとした心が表れている。

 初句「長らへば」は、未然形に「ば」が付いた仮定で、生き長らえたならばという意を表す。
 二句「思ひ出にせむ」は、意志の「む」で、思い出にしようという二句切れで、八音の字余りである。
 三句「思ひ出でよ」は、命令形で相手に思い出してほしいと呼びかける三句切れである。二句の「思ひ出」と同じ語を重ねている。
 四句「君とみかさの」は、あなたと「見」た意と、大和国の歌枕「三笠山」とを掛けている。本巻の第二百九十一首、第三百三十五首にも三笠山が詠まれている。
 結句「山の端の月」は、体言止めで、三笠山の稜線にかかる月を示して結ぶ。

みかさ:あなたと見た意の「見」と、大和国の歌枕「三笠山」を掛ける
ながらふ:生き長らえる
出典
詞花和歌集
前の歌
月にこそ昔のことは覚えけれ 我を忘るる人に見せばや
次の歌
逢坂の関の杉原下晴れて 月のもるにぞまかせたりける