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つれづれと荒れたる宿を眺むれば
月ばかりこそ昔なりけれ

歌の意味
なすこともなく、荒れてしまった住まいを眺めていると、月だけが昔のままであった。
鑑賞
巻第九 雑歌上 308

 することもなく荒れはてた住まいを眺めていると、すべてが変わったなかで月だけが昔のままだと気づく一首である。荒廃した宿と変わらぬ月とを対比させ、過ぎ去った日々への懐旧の思いを表している。
 本巻の第二百九十首も、池に映る月は変わらず眺める人が変わったと詠み、変わらぬ月と移ろう人の世という主題が繰り返されている。

 初句「つれづれと」は、することもなく所在ないさまを表す。
 二句「荒れたる宿を」は、存続の「たり」の連体形で、荒れてしまった住まいをいう。
 三句「眺むれば」は、已然形に「ば」が付いた確定条件で、眺めているとという意を表す。
 四句「月ばかりこそ」は、副助詞「ばかり」と係助詞「こそ」で、月だけをと強く取り立てる。
 結句「昔なりけれ」は、断定の「なり」と詠嘆の「けり」の已然形で「こそ」を受けて結ぶ係り結びで、月だけが昔のままであったと結ぶ。本巻の第三百五首も月に昔をしのんでいる。

つれづれ:することがなく退屈なこと
やど:住まい、家
出典
詞花和歌集
前の歌
逢坂の関の杉原下晴れて 月のもるにぞまかせたりける
次の歌
深く入りて住まばやと思ふ山の端を いかなる月の出づるなるらむ