菖蒲草かりにも来らむものゆゑに
閨のつまとや人の見るらむ
- 歌の意味
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菖蒲草を刈りに来るように、かりそめに立ち寄るだけのものなのに、軒端に菖蒲を葺く寝屋の端と同じく、人はわたしをあの人の妻と見ているのだろうか。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌上 311
端午の節句に軒に葺く菖蒲草にことよせ、相手はかりそめに通ってくるだけなのに、世間は自分をその人の妻と見ているのだろうかと詠む一首である。「刈り」と「仮」、軒端の「端(つま)」と「妻」とを掛け、かりそめの仲を正式な妻と見られることへの戸惑いを、機知に富んだ言葉で表している。
本巻の第三百三十首、第三百三十六首にも菖蒲草が詠まれている。
初句「菖蒲草」は、端午の節句に軒に葺いた菖蒲をいう。
二句「かりにも来らむ」は、菖蒲を「刈り」に来る意と、「仮」にちょっと来る意とを掛け、推量の「らむ」で、相手がかりそめに来るのだろうという意を表す。
三句「ものゆゑに」は、逆接の「ものゆゑ」で、そうであるのにという意を表す。
四句「閨のつまとや」は、寝室の軒の「端(つま)」と「妻」とを掛け、係助詞「や」で疑問を示す。
結句「人の見るらむ」は、現在推量の「らむ」の連体形で「や」を受けて結ぶ係り結びで、人は見ているのだろうかと結ぶ。
あやめぐさ:菖蒲。端午の節句に邪気を払うため軒に葺いた
かり:菖蒲を刈る意の「刈り」と、かりそめの意の「仮」を掛ける
つま:軒の端の意の「端」と、「妻」を掛ける
ねや:寝室
- 作者
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和泉式部
- 出典
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詞花和歌集
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おのが身のおのが心にかなはぬを 思はばものは思ひ知りなむ
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人知れずもの思ふことはならひにき 花に別れぬ春しなければ