人知れずもの思ふことはならひにき
花に別れぬ春しなければ
- 歌の意味
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人知れず物思いをすることには慣れてしまった。花に別れない春などないのだから。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌上 312
毎年春が来るたびに花との別れを経験してきたので、人知れず物思いにふけることにはもう慣れてしまったと詠む一首である。花との別れという春ごとの悲しみを、自分の人生の物思いへと重ねている。
本巻の第三百十六首も「ならひけり」と詠み、つらさを習い覚えるという同じ発想が見られる。
初句「人知れず」は、人に知られずにという意を表す。
二句「もの思ふことは」は、思い悩むことをいい、係助詞「は」で取り立てる。
三句「ならひにき」は、完了の「ぬ」と過去の「き」で、慣れてしまったという三句切れである。
四句「花に別れぬ」は、打ち消しの「ず」の連体形で、花と別れないという意を表す。
結句「春しなければ」は、強意の副助詞「し」と、已然形に「ば」が付いた確定条件で、そういう春はないのだからと理由を倒置して結ぶ。
ならふ:慣れる。習い覚える
ものおもふ:思い悩む
- 作者
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和泉式部
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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菖蒲草かりにも来らむものゆゑに 閨のつまとや人の見るらむ
- 次の歌
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思はれぬ空の気色を見るからに 我もしぐるる神無月かな