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秋はみな思ふことなき荻の葉も
末たわむまで露は置くめり

歌の意味
秋はすべてのものが物思いをするようだ。思い悩むことなどない荻の葉にも、葉先がたわむほど露が置いているようだ。
鑑賞
巻第九 雑歌上 320

 秋には、物思いなどないはずの荻の葉にさえ、葉先がたわむほど露が置いていると詠み、秋は万物が物思いに沈む季節だと述べる一首である。荻の葉の露を涙に見立て、秋の憂いの深さを表している。

 初句「秋はみな」は、秋はすべてのものがという意で、係助詞「は」で秋を取り立てる。
 二句「思ふことなき」は、思い悩むことのないという意を表す。
 三句「荻の葉も」は、秋風にそよぐ荻の葉をいい、係助詞「も」でそれさえもという意を添える。
 四句「末たわむまで」は、葉先がたわむほどにという意で、露の多さを表す。
 結句「露は置くめり」は、推定の「めり」で、露が置いているようだと結ぶ。露は涙を暗示している。

をぎ:水辺に生えるイネ科の草。秋風にそよぐ葉が詠まれた
すゑ:葉の先
作者
和泉式部
出典
詞花和歌集
前の歌
世の人のまだ知らぬ間の薄氷 見わかぬほどに消えねとぞ思ふ
次の歌
いかなれば同じ流れの水にしも さのみは月の映るなるらむ