いかでかくねを惜しむらむ菖蒲草
うきには声も立てつべき世を
- 歌の意味
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どうしてこのように声を惜しんで泣かずにいるのだろうか、菖蒲草よ。泥の中に根を張るように、つらいことには声をあげて泣いてもよい世の中なのに。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌上 330
端午の節句の菖蒲草にことよせ、つらいことばかりのこの世では声をあげて泣いてもよいのに、どうして声を惜しんで泣かずにいるのかと詠む一首である。菖蒲の「根」と泣く「音」、沼の「泥(うき)」と「憂き」を掛け、こらえている悲しみを菖蒲草に託している。
本巻の第三百十一首、第三百三十六首にも菖蒲草が詠まれている。
初句「いかでかく」は、どうしてこのようにという疑問を表す。
二句「ねを惜しむらむ」は、菖蒲の「根」と泣く「音」とを掛け、現在推量の「らむ」で、声を惜しんでいるのだろうかという二句切れである。
三句「菖蒲草」は、端午の節句に軒に葺いた菖蒲で、呼びかけの形をとっている。
四句「うきには声も」は、菖蒲の生える沼の「泥(うき)」と「憂き」とを掛け、つらいことにはという意を表す。
結句「立てつべき世を」は、強意の「つ」と当然の「べし」、逆接の「を」で、声を立ててもよい世の中なのにと結ぶ。
ね:菖蒲の「根」と、泣く「音」を掛ける
うき:菖蒲の生える沼の「泥」と、つらい意の「憂き」を掛ける
あやめぐさ:菖蒲。端午の節句に邪気を払うため軒に葺いた
- 作者
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周防内侍
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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住吉の波にひたれる松よりも 神のしるしぞあらはれにける
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よの中にふるかひもなき竹の子は 我がつむ年をたてまつるなり