悪しかれと思はぬ山の峰にだに
生ふなるものを人のなげきは
- 歌の意味
-
悪くなれとも思わない山の峰にさえ、なげき(投げ木)は生えるというのに。人の嘆きもまた、誰が悪く思うわけでもなく生まれてくるものだ。
- 鑑賞
-
巻第九 雑歌上 333
誰も悪くなれと願うわけでもない山の峰にさえ「なげき(投げ木)」が生えるのだから、人の嘆きもおのずと生まれてくるものだと詠む一首である。薪にする木をいう「投げ木」と「嘆き」とを掛け、恨む相手もないままに湧いてくる嘆きの深さを表している。
初句「悪しかれと」は、形容詞「悪し」の命令形で、悪くなれという意を表す。
二句「思はぬ山の」は、打ち消しの「ず」の連体形で、そう思いもしない山をいう。
三句「峰にだに」は、副助詞「だに」で、山の峰にさえという意を表す。
四句「生ふなるものを」は、伝聞の「なり」と逆接の「ものを」で、生えるというのにという意を表す。
結句「人のなげきは」は、「投げ木」と「嘆き」とを掛け、倒置によって四句の主語を示して結ぶ。
なげき:薪にする木の「投げ木」と、「嘆き」を掛ける
おふ:草木が生える
- 作者
-
和泉式部
- 出典
-
詞花和歌集
- 前の歌
-
年経ぬる竹のよはひを返しても このよを長くなさむとぞ思ふ
- 次の歌
-
ひたぶるに山田守る身となりぬれば 我のみ人を驚かすかな