君引かずなりなましかば菖蒲草
いかなるねをか今日はかけまし
- 歌の意味
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あなたが引いてくださらなかったならば、菖蒲草の、どのような根を今日の節句に掛けたらよかったのだろうか。わたしもどのような声をあげて泣いていたことか。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌上 336
端午の節句に菖蒲を引いて贈ってくれた相手に、もしあなたが引いてくれなかったら、今日はどんな根を掛けたらよかっただろうと感謝する一首である。菖蒲の「根」に泣く「音」を掛け、相手の心遣いがなければ泣いていただろうという思いもこめている。
本巻の第三百三十首と同じく、菖蒲の「根」と「音」を掛けており、第三百十一首とあわせて菖蒲草の歌が三首詠まれている。
初句「君引かず」は、あなたが菖蒲を引き抜いてくれないという意を表す。
二句「なりなましかば」は、完了の「ぬ」と反実仮想の「まし」の未然形「ましか」に「ば」が付いた仮定で、そうなっていたならばという意を表す。
三句「菖蒲草」は、端午の節句に軒に葺き、根の長さを競いもした菖蒲をいう。
四句「いかなるねをか」は、菖蒲の「根」と泣く「音」とを掛け、係助詞「か」で疑問を示す。本巻の第三百三十首の「ねを惜しむらむ」と同じ掛詞である。
結句「今日はかけまし」は、反実仮想の「まし」の連体形で「か」を受けて結ぶ係り結びで、今日はどんな根を掛けただろうかと結ぶ。
ね:菖蒲の「根」と、泣く「音」を掛ける
ひく:草を根ごと引き抜く
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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三笠山さすがに陰に隠ろへて ふるかひもなきあめの下かな
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思ひかね別れし野辺を来て見れば 浅茅が原に秋風ぞ吹く