思ひかね別れし野辺を来て見れば
浅茅が原に秋風ぞ吹く
- 歌の意味
-
思いに耐えかねて、あの人と別れた野辺に来てみると、浅茅の原に秋風が吹いている。
- 鑑賞
-
巻第九 雑歌上 337
恋しさに耐えかねて、かつて人と別れた野辺を訪れると、浅茅の原にただ秋風が吹いていたと詠む一首である。別れの野辺は、亡き人を見送った野辺とも解され、荒れた浅茅が原と秋風の景に、取り返しのつかない別れの寂しさを託している。
初句「思ひかね」は、思いに耐えきれずにという意を表す。
二句「別れし野辺を」は、過去の「き」の連体形で、かつて人と別れた野辺をいう。
三句「来て見れば」は、已然形に「ば」が付いた確定条件で、来てみるとという意を表す。
四句「浅茅が原に」は、丈の低い茅の生えた荒れた野原をいう。
結句「秋風ぞ吹く」は、係助詞「ぞ」と連体形「吹く」による係り結びで、秋風が吹いていると、寂しい景を示して結ぶ。
おもひかぬ:思いに耐えきれない
のべ:野原。また葬送の地
あさぢがはら:丈の低い茅の生えた荒れた野原
- 作者
-
源道済
- 出典
-
詞花和歌集
- 前の歌
-
君引かずなりなましかば菖蒲草 いかなるねをか今日はかけまし
- 次の歌
-
故郷へ我は帰りぬ武隈の まつとは誰に告げよとか思ふ