埋もれ木の下は朽つれどいにしへの
花の心は忘れざりけり
- 歌の意味
-
埋もれ木の下のほうは朽ちてしまったけれども、昔の花の心は忘れていないのだった。
- 鑑賞
-
巻第九 雑歌上 342
土に埋もれて朽ちかけた埋もれ木に、世に用いられず老いた自分を重ね、身は朽ちても昔の華やかな心は忘れていないと詠む一首である。不遇の身でありながら、かつての誇りや風雅の心を失わない思いが表れている。
初句「埋もれ木の」は、土や水の中に埋もれた木で、世に知られず不遇な身のたとえである。
二句「下は朽つれど」は、逆接の「ど」で、下のほうは朽ちたけれどもという意を表す。
三句「いにしへの」は、昔のという意で、かつての日々を示す。
四句「花の心は」は、花の咲いていたころの心をいい、華やかであった昔の心を重ねている。
結句「忘れざりけり」は、打ち消しの「ず」と詠嘆の「けり」で、忘れていなかったと気づいて結ぶ。巻末の第三百四十七首も、沈淪の身を詠みつつ「けり」で結んでいる。
うもれぎ:土や水の中に埋もれた木。世に知られない不遇な身のたとえ
くつ:朽ちる
- 作者
-
大江匡房
- 出典
-
詞花和歌集
- 前の歌
-
身の憂さは過ぎぬる方を思ふにも 今行く末のことぞ悲しき
- 次の歌
-
今はただ昔ぞ常に恋ひらるる 残りありしを思ひ出にして