行く末のいにしへばかり恋しくは
過ぐる月日も嘆かざらまし
- 歌の意味
-
これから先の行く末が、過ぎ去った昔ほどに恋しく思われるのであれば、過ぎていく月日を嘆くこともないだろうに。
- 鑑賞
-
巻第九 雑歌上 345
これからの行く末が昔と同じほど恋しく、心ひかれるものであれば、月日の過ぎるのを嘆きはしないだろうと詠む一首である。過去ばかりが懐かしく、未来に望みを持てない老いの心を、反実仮想によって表している。
本巻の第三百四十一首の行く末を悲しむ歌、第三百四十三首の昔を恋う歌と、同じ主題を別の角度から詠んでいる。
初句「行く末の」は、これから先の将来をいう。
二句「いにしへばかり」は、副助詞「ばかり」で、昔と同じほどにという程度を表す。
三句「恋しくは」は、形容詞の連用形に係助詞「は」が付いた仮定で、恋しく思われるならばという意を表す。
四句「過ぐる月日も」は、過ぎていく月日をいい、係助詞「も」で添える。
結句「嘆かざらまし」は、打ち消しの「ず」と反実仮想の「まし」で、嘆きはしないだろうにと結ぶ。
いにしへ:過ぎ去った昔
ゆくすゑ:将来、これから先
- 出典
-
詞花和歌集
- 前の歌
-
老いてのち昔を偲ぶ涙こそ ここら人目を忍ばざりけれ
- 次の歌
-
厭ひてもなほ惜しまるる我が身かな 二たび来べきこの世ならねば