葦火焚くまやの住処は世の中を
あくがれ出づる門出なりけり
- 歌の意味
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葦を燃やして火を焚くこの粗末な住まいは、世の中から心が離れてさまよい出ていく、その門出であったのだ。
- 鑑賞
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巻第十 雑歌下 348
葦火を焚くような粗末な住まいに暮らすことは、俗世から心が離れて出ていく門出であったと詠む一首である。貧しい住まいを嘆くのではなく、世を離れる第一歩としてとらえ直したところに、遁世へ向かう心がうかがえる。
雑歌下の巻頭に置かれた歌である。本巻の第四百十一首も「あくがるる」と詠み、さまよい出る身のはかなさを述べている。世を離れる門出に始まった本巻は、巻末の第四百十五首の有明の月の歌まで、無常と仏の道を見つめる歌で閉じられていく。
初句「葦火焚く」は、葦を燃やして火を焚くことをいい、粗末な暮らしを示す。
二句「まやの住処は」は、「まや」の語義に諸説があるが家屋の意に解され、係助詞「は」で住まいを取り立てる。
三句「世の中を」は、俗世をいう。
四句「あくがれ出づる」は、心が身から離れてさまよい出ることをいい、俗世を離れる意を表す。本巻の第四百十一首にも「あくがるる」と詠まれている。
結句「門出なりけり」は、断定の「なり」と詠嘆の「けり」で、世を離れる門出であったと気づいて結ぶ。
あしび:葦を燃やす火。粗末な暮らしで焚く火
まや:家屋。語義に諸説がある
あくがる:心が身から離れてさまよい出る。住む所を離れる
かどで:旅立ち、出発
- 作者
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源俊頼
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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難波江の葦間に宿る月見れば 我が身一つも沈まざりけり
- 次の歌
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賤の女がゑぐ摘む沢の薄氷 いつまで経べき我が身なるらむ