花薄招かばここにとまりなむ
いづれの野辺もつひの住処ぞ
- 歌の意味
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花すすきが招くのなら、ここにとどまってしまおう。どの野辺であっても、最後の住まいであることに変わりはないのだから。
- 鑑賞
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巻第十 雑歌下 354
穂の出たすすきが風になびくさまを人を招く手に見立て、招くのならここにとどまろうと詠む一首である。どこの野辺であっても、人はいずれ野に葬られるのだから終の住処であることに違いはないと、無常を悟った心がこめられている。
巻頭の第三百四十八首が世を離れる門出の「住処」を詠んだのに対し、ここでは最後に行き着く「つひの住処」を詠み、住まいをめぐって呼応している。
初句「花薄」は、穂の出たすすきをいい、風になびく穂を人を招く手に見立てる。
二句「招かばここに」は、未然形に「ば」が付いた仮定で、招くならばという意を表す。
三句「とまりなむ」は、強意の「ぬ」と意志の「む」で、きっととどまろうという三句切れである。
四句「いづれの野辺も」は、係助詞「も」で、どの野辺であってもという意を表す。
結句「つひの住処ぞ」は、終助詞「ぞ」で、最後の住まいなのだと言い切って結ぶ。巻頭の第三百四十八首の「住処」と響き合う。
はなすすき:穂の出たすすき
のべ:野原。また葬送の地
つひのすみか:最後に住む所。死後に身を置く所
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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朝な朝な鹿のしがらむ萩が枝の 末葉の露のありがたの世や
- 次の歌
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よそに見し尾花が末の白露は あるかなきかの我が身なりけり