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かりそめの憂き世の闇をかき分けて
うらやましくも出づる月かな

歌の意味
かりそめのこの憂き世の闇をかき分けて、うらやましいことに出ていく月であることだ。
鑑賞
巻第十 雑歌下 370

 かりそめの憂き世の闇をかき分けるようにして出ていく月を、うらやましく眺める一首である。闇を抜け出て澄む月に、世の迷いを離れて悟りに至ることを重ね、そうできない自分の身をかえりみる思いがこめられている。出家して世を離れた人を月にたとえたものとも解される。
 本巻の第三百六十首の「闇に惑はむ」、第四百十四首の「闇に惑へる人を照らさむ」と、闇と月をめぐる歌が響き合っている。

 初句「かりそめの」は、一時的ではかないという意を表す。
 二句「憂き世の闇を」は、つらいこの世を闇にたとえている。
 三句「かき分けて」は、押し分けるようにしてという意を表す。
 四句「うらやましくも」は、係助詞「も」で、うらやましいことにという意を表す。
 結句「出づる月かな」は、詠嘆の「かな」で、闇を出ていく月を詠嘆して結ぶ。「出づる」には、世を出る意も重ねられている。

うきよ:つらいこの世
作者
大江匡房
出典
詞花和歌集
前の歌
思ひやれ心の水の浅ければ かきながすべき言の葉もなし
次の歌
帰る雁西へ行きせば玉章に 思ふことをば書きつけてまし