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雲の上は月こそさやに冴えわたれ
まだ滞るものや何なり

歌の意味
雲の上では月がはっきりと冴えわたっているのに、まだ滞っているものは、いったい何なのか。
鑑賞
巻第十 雑歌下 375

 雲の上、すなわち宮中では月が明るく冴えわたっているのに、自分の身にはまだ滞っているものがあるのは何なのかと問いかける一首である。月の冴えわたる宮中の明るさに対し、望みがかなわない我が身をほのめかしたものと見られる。
 次歌の第三百七十六首はこの歌に答えたもので、二首は贈答の形で並べられている。

 初句「雲の上は」は、空の上の意と、宮中の意をもつ「雲の上」をいう。
 二句「月こそさやに」は、係助詞「こそ」と副詞「さやに」で、月がはっきりと明るいことを強調する。
 三句「冴えわたれ」は、已然形で「こそ」を受けて結ぶ係り結びで、冴えわたっているのにと逆接的に続ける三句切れである。
 四句「まだ滞る」は、物事が進まずにとどまっていることをいう。次歌の初句がこの語を受けている。
 結句「ものや何なり」は、係助詞「や」で疑問を示し、それは何なのかと問いかけて結ぶ。

くものうへ:雲の上の空。また宮中
さゆ:光が冷たく澄む
とどこほる:物事がはかどらずとどまる
作者
津守国基
出典
詞花和歌集
前の歌
年を経て星をいただく黒髪の 人よりしもになりにけるかな
次の歌
滞ることはなけれど住吉の まつ心にや久しかるらむ