- 歌の意味
-
滞っていることは何もないけれども、住吉の松のように待つ心が長いので、久しく感じられるのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第十 雑歌下 376
前歌の第三百七十五首の問いかけに答えた一首である。滞っていることなど何もないが、住吉の松のように待つ心が長いから、時が久しく思われるのだろうと応じている。前歌の作者の津守国基は住吉社の神主であり、その縁で住吉の松を持ち出し、相手をなだめ励ます心をこめている。
初句「滞る」は、前歌の四句の語をそのまま受けて詠み出している。
二句「ことはなけれど」は、逆接の「ど」で、何もないけれどもという意を表す。
三句「住吉の」は、摂津国の歌枕で、松の名所として知られた住吉をいう。
四句「まつ心にや」は、住吉の「松」と「待つ」とを掛け、係助詞「や」で疑問を示す。
結句「久しかるらむ」は、現在推量の「らむ」の連体形で「や」を受けて結ぶ係り結びで、久しく感じられるのだろうかと結ぶ。松の縁で「久し」を用いている。
まつ:住吉の「松」と、「待つ」を掛ける
すみよし:摂津国の地。住吉社があり、松の名所として知られた歌枕
- 作者
-
藤原顕季
- 出典
-
詞花和歌集
- 前の歌
-
雲の上は月こそさやに冴えわたれ まだ滞るものや何なり
- 次の歌
-
白河の流れを頼む心をば 誰かは空に汲みて知るべき