このもとにかきあつめつる言の葉を
ははその森の形見とは見よ
- 歌の意味
-
木の下に掻き集めた落ち葉のように、子であるわたしが書き集めた言葉を、柞の森の、すなわち亡き母の形見として見てほしい。
- 鑑賞
-
巻第十 雑歌下 380
木の下に掻き集めた木の葉に、子が書き集めた亡き母の歌を重ね、それを母の形見として見てほしいと詠む一首と解される。「柞」に「母」を、「木」に「子」を、「掻き集め」に「書き集め」を掛けて、母をしのぶ子の思いを、森の落ち葉の景に託している。
本巻の第三百九十八首も「このもと」に子を重ねて詠んでいる。
初句「このもとに」は、「木の下」の意と、「子」である自分のもとにの意とを掛けている。
二句「かきあつめつる」は、木の葉を「掻き」集める意と、歌を「書き」集める意とを掛け、完了の「つ」の連体形で表す。
三句「言の葉を」は、言葉、歌をいい、「葉」が木の縁語となる。
四句「ははその森の」は、山城国の歌枕である「柞の森」に「母」を掛けている。
結句「形見とは見よ」は、命令形「見よ」で、形見として見てほしいと結ぶ。
このもと:「木の下」の意と、「子の」の意を掛ける
かきあつむ:木の葉を掻き集める意と、歌を書き集める意を掛ける
ははそのもり:山城国の森の名である「柞の森」に、「母」を掛ける
かたみ:亡き人をしのぶよすがとなる物
- 出典
-
詞花和歌集
- 前の歌
-
久方の天の香具山出づる日も 我が方にこそ光さすらめ
- 次の歌
-
思ひかねそなたの空を眺むれば ただ山の端にかかる白雲