- 歌の意味
- 昔を恋い慕う涙に目の前を暗くされて、ぼんやりと霞んで見える秋の夜の月であることよ。
- 鑑賞
-
巻第十 雑歌下 392
昔を恋しく思って流す涙のために目がくもり、本来は澄みわたるはずの秋の夜の月がおぼろに見えると詠む一首である。春の月の形容である「おぼろ」を秋の月に用い、涙によって曇る月に懐旧の深さを表している。
次歌の第三百九十三首も、悲しみの中で月を見る心を詠み、ここから人を失った悲しみの歌が続いていく。
初句「いにしへを」は、昔をという意を表す。
二句「恋ふる涙に」は、昔を恋い慕って流す涙をいう。
三句「くらされて」は、受身の「る」で、涙に目の前を暗くされてという意を表す。
四句「おぼろに見ゆる」は、ぼんやりかすんで見えるという意を表す。
結句「秋の夜の月」は、体言止めで、澄むはずの秋の月を示して結ぶ。
いにしへ:昔
くらす:暗くする
- 作者
- 藤原公任
- 出典
- 詞花和歌集
- 前の歌
- 思ひ出もなき故郷の山なれど 隠れゆくはたあはれなりけり
- 次の歌
- そのことと思はぬだにもあるものを 何心地して月を見るらむ