人知れずもの思ふこともありしかど
このことばかり悲しきはなし
- 歌の意味
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人知れず物思いをすることもこれまでにあったけれども、このことほど悲しいことはない。
- 鑑賞
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巻第十 雑歌下 397
これまでにも人知れず思い悩むことはあったが、このたびのことほど悲しいことはないと詠む一首である。作者が仕えた郁芳門院の崩御を悼んだ歌と見られ、飾らない言葉に深い悲しみがこめられている。
巻第九の第三百十二首も「人知れずもの思ふことは」と詠み出し、花との別れに慣れた物思いを詠んでいた。ここでは同じ言葉で始めながら、慣れることのできない悲しみを述べている。
初句「人知れず」は、人に知られずにという意を表す。
二句「もの思ふことも」は、思い悩むことをいい、係助詞「も」で添える。
三句「ありしかど」は、過去の「き」の已然形と逆接の「ど」で、あったけれどもという意を表す。
四句「このことばかり」は、副助詞「ばかり」で、このことほどという意を表す。
結句「悲しきはなし」は、これほど悲しいことはないと言い切って結ぶ。
ものおもふ:思い悩む
- 作者
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郁芳門院安芸
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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夕まぐれ木繁き庭を眺めつつ 木の葉とともに落つる涙か
- 次の歌
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生ひ立たで枯れぬと聞きしこのもとの いかでなげきの森となるらむ