思へども忌むとて言はぬことなれば
そなたに向きて音をのみぞ泣く
- 歌の意味
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心に思っていても、忌むべきこととして口に出さないことなので、そちらの方に向かって声をあげて泣くばかりだ。
- 鑑賞
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巻第十 雑歌下 410
心に思っていても、縁起が悪いとして口に出すのを忌むことであるので、ただその方角に向かって声をあげて泣くばかりだと詠む一首である。言葉にできない悲しみを、ただ泣くことでしか表せない切なさがこめられている。
初句「思へども」は、逆接の「ども」で、心に思っていてもという意を表す。
二句「忌むとて言はぬ」は、不吉なこととして避けるとて口に出さないという意を表す。
三句「ことなれば」は、断定の「なり」の已然形に「ば」が付いた確定条件で、そういうことであるのでという意を表す。
四句「そなたに向きて」は、そちらの方に向かってという意を表す。
結句「音をのみぞ泣く」は、声をあげて泣く意の「音を泣く」に副助詞「のみ」と係助詞「ぞ」が入り、連体形「泣く」で結ぶ係り結びで、泣くばかりだと結ぶ。
いむ:不吉なこととして避ける
ねをなく:声をあげて泣く
- 作者
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大伴坂上郎女
- 出典
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詞花和歌集
- 前の歌
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長き世の苦しきことを思へかし 何嘆くらむ仮の宿りに
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あくがるる身のはかなさは百年の 半ば過ぎてぞ思ひ知らるる