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九重の雲居に春ぞ立ちぬらし
大内山に霞たなびく

歌の意味
宮中の雲の上には春が立ったらしい。大内山に霞がたなびいている。
鑑賞
春歌 2

詞書「春のはじめの歌」
 都の宮中に春が訪れたことを、大内山にたなびく霞から推し量った歌である。鎌倉にいる作者が遠い京の内裏の春に思いを馳せたもので、朝廷を敬い慕う心がうかがえる。賀茂真淵は合点を付し、作者の歌風の中ごろにあたる「中さだの歌」と評している。
 類従本ではこの歌の詞書を「立春の心をよめる」とする。

 初句「九重の」は、門を幾重にも重ねた皇居、すなわち宮中を意味する語である。
 二句「雲居に春ぞ」の「雲居」は宮中のことで、係助詞「ぞ」が春を強く指し示す。前歌の第一首が春を「天の原」から来るものとしたのを受け、ここでは雲の上の宮中に春を見ている。
 三句「立ちぬらし」の「ぬ」は完了、「らし」は根拠のある推定で、「ぞ」の結びとなりここで句切れとなる。
 四句「大内山に」の「大内山」は京都の仁和寺の北にある山で、内裏をたとえる語としても用いられる。
 結句「霞たなびく」は推定の根拠となる景を示す。霞がたなびくとする結句は本巻の第十一首、第十二首にも共通し、立春の景物としての霞を印象づける。

ここのへ:宮中、皇居
くもゐ:雲のある高い所。転じて宮中
おほうちやま:京都の仁和寺の北にある山。内裏をたとえても用いる
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
今朝見れば山も霞みて久方の 天の原より春は来にけり
次の歌
山里に家居はすべし鶯の 鳴く初声の聞かまほしさに