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春風は吹けど吹かねど梅の花
咲けるあたりはしるくぞありける

歌の意味
春風が吹いても吹かなくても、梅の花の咲いているあたりは、それとはっきり分かるのだった。
鑑賞
春歌 23

詞書は前の歌に続き「梅の花をよめる」
 風が香りを運ぶかどうかにかかわらず、梅の花の咲いているあたりはその香りで自然とそれと知られる、と梅の香の豊かさを詠む。目には見えない香りによって花の所在が分かるという趣向に、梅の香を愛でる心が表れている。賀茂真淵は合点を付している。
 香りによって梅の在りかが知られるという発想は、『古今和歌集』の凡河内躬恒の「春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やはかくるる」にも通じるものである。

 初句「春風は」は、梅の香を運ぶものとしての春風を示す。
 二句「吹けど吹かねど」は、吹いても吹かなくてもの意で、逆接の「ど」を重ねて対句風に言い表している。
 三句「梅の花」は、前歌の第二十二首から続く梅の一群の題材を示す。
 四句「咲けるあたりは」の「る」は存続の助動詞「り」の連体形で、咲いている場所の周辺を指す。
 結句「しるくぞありける」の「しるく」ははっきりしているの意で、係助詞「ぞ」と「けり」の連体形による係り結びとなり、香りの確かさへの感動を表す。

あたり:付近、その辺り
にほふ:よい香りが漂う
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
梅が枝に凍れる霜や解けぬらむ 干しあへぬ露の花にこぼれる
次の歌
梅の花咲ける盛りを目の前に 過ぐせる宿は春ぞ少なき