咲きしよりかねてぞ惜しき梅の花
散りの別れはわが身と思へば
- 歌の意味
-
咲いた時から前もって惜しまれる、梅の花よ。散って別れる時のつらさは、我が身のことだと思うので。
- 鑑賞
-
春歌 26
詞書は前の歌に続き「梅の花をよめる」
梅の花が咲いたその時から、すでに散ることが惜しまれると詠む。花が散る別れのつらさを我が身に引き受けるものと感じるため、盛りのうちから別れを思わずにいられない、という先回りした惜春の情である。賀茂真淵は「散りの別れ」の句を後の世の詠みぶりだと評している。
類従本では「一本及印本所載歌」の部に収める。
初句「咲きしより」は、咲いた時からの意で、花の盛りの始まりを起点とする。
二句「かねてぞ惜しき」の「かねて」は前もっての意で、「ぞ」と形容詞の連体形「惜しき」による係り結びとなる。
三句「梅の花」は呼びかけの体で、ここで句切れとなる。
四句「散りの別れは」は、花が散ることによる別れの意で、真淵が後の世の詠みぶりと評した句である。
結句「わが身と思へば」は、その別れのつらさを我が身のことと思うのでと理由を示し、上の句との倒置となっている。前歌の第二十五首が花の盛りの喜びを詠んだのに続き、ここでは早くも散る時を思っている。
ちり:花が散ること、散り際
わかれ:別れること、離別
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
わが宿の八重の紅梅咲きにけり 知るも知らぬもなべて訪はなむ
- 次の歌
-
わが袖に香をだに残せ梅の花 飽かで散りぬる忘れ形見に