鶯はいたくなわびそ梅の花
今年のみ散る習ひならねば
- 歌の意味
-
鶯よ、そんなにひどく嘆くな。梅の花は今年だけ散るというならわしではないのだから。
- 鑑賞
-
春歌 29
詞書は前の歌に続き「梅の花をよめる」
梅の花が散るのを嘆く鶯に向かい、花が散るのは今年に限ったことではないのだから、そんなに嘆くなと慰める歌である。鶯をいたわる言葉の裏に、毎年繰り返される花の散る定めを受け入れようとする作者自身の思いがにじむ。
初句「鶯は」は、梅と取り合わされる鶯を呼びかけの相手としている。
二句「いたくなわびそ」は「な〜そ」の禁止の形で、ひどく嘆くなの意となり、ここで句切れとなる。
三句「梅の花」は、鶯が嘆く理由となる散る花を示す。
四句「今年のみ散る」の「のみ」は限定で、今年だけ散るの意である。
結句「習ひならねば」は、ならわしではないのだからと理由を示し、倒置となっている。前歌までの散る梅を惜しむ歌を受け、ここでは散ることを世の常として受けとめる心を示す。
わぶ:嘆く、つらく思う
ならひ:世の常、ならわし
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
さりともと思ひしほどに梅の花 散り過ぐるまで君が来まさぬ
- 次の歌
-
年経れば宿は荒れにけり梅の花 花は昔の香に匂へども